美人に猛烈に興味がある。
私は自分のことを200%美人だとは思ったことはない。(今は実験上、無理やり自分を美人断定しているけど。笑)むしろ、私が美人だと思っていた母から、女性として否定され続けてきた。
「私のほうが可愛いよね。でも、あんたは…」
「私のほうが脚の線が綺麗。でも、あんたは…」
「私のほうが男性にモテる。でも、あんたは…」
思春期に入ったくらいから言われ続けてきたので、「母ちゃんは美人なのに、私はダメだなあ。美人な母に申し訳ないなあ」と思ってきた。
母は自他共に認める人気者。明るくて、気立てがよくて、周囲から慕われる人格者。年齢マイナス10歳に見える美魔女だし、目鼻立ちもはっきりしていて、胸はあるし、美脚だし、プロポーションもいい。メイクもファッションも華やかで、本当に文字通りの美人だ。
対する私は、男っぽいし、コミュ障だし、オタクだし、やることなすこと全て雑。スクールカースト最下位で、自分の身なりを構うことは、人生早々にあきらめていた。
母の言動は徐々にエスカレートしていった。
「あんたは男性と付き合えない」
「あんたは結婚できない」
「あんたに子供を産む資格はない」
「あんたはずっと独りぼっち」
初めは母が自分のためを思って助言してくれるのだと信じていた。
しかし、私の心は次第に病んでいった。
何かがおかしい……。あれ、うちの母って、もしかして流行りの毒親……!?カウンセリングを受け、心理学を勉強するうちに、私は母から女性として足を引っ張られていることに気づいた。
やがて、意を決して、母と対決。なぜ私を女性として貶めるような言動を繰り返すのか、問いただした。
もちろん、最初は絶対に認めず、言い負かされてしまうことも多かった。「自分ができないのを、他人のせいにするんじゃないわよ」って。
もはや絶縁しかないか……。私は覚悟を決めた。
だが、何回もの話し合いの後、母は号泣しながら、私に告白した。
「これ以上責められたら、私は壊れてしまう。私も美人に生まれたかった」
え…? お母さん、だって美人でしょ? 自分でもそう思ってきたんでしょ?
しかし、母は首を横に振った。
「小さいころ『お前だけ美人じゃなくて猿みたい』って兄からずっと馬鹿にされてきた」
母の兄弟は美形ぞろい。特に男性陣は端正な顔立ちで、俳優のように格好良かった母は顔立ちのことで、幼少期に実兄からいじめを受けていたのだ。
美人だと思っていた母は、自分のことを美人だと思っていなかった。いつも自信満々の母が号泣していた。私にとっては、驚きだった。
さらに母は続けた。
「あんたは私より手足が長いし、背が高いから、ずっとうらやましかった。私よりも『美人』になれるから……」
……???私は理解できなかった。だって、私、美人て言われたことないし、学校でも会社でも「ブス」「デブ」「バカ」って長年いじめられてきたんだよ。
母は気でも狂ったのだろうか?
おい、「美人」って一体、何なんだよ!
地球の裏側くらい、自分と縁遠かった「美人」。でも、母が執着した「美人」に、私は自分が壊れるくらい振り回されてきたのだ。
私は母が長年悩んだ「美人」について、どうしても知りたくなった。