結婚式で浮かれマックスの後、ヤフーニュースから「沢尻容疑者」という表記が目に入ってきた。
冷水を浴びせられた気分だった。
「別に…」どころでは済まされない。
遂にバカなことをやってしまった。
ああ、何てことをしてくれたのだ!
彼女が演じるはずだったのは、信長の妻、帰蝶(きちょう、濃姫)の役。
この役はかつて松坂慶子、菊池桃子、柴咲コウ、内田有紀、観月ありさ、涼風真世……
局は違えど、そうそうたる役者が演じている。
まさに女優オブ女優が演じる、戦国物語最大の花形の役なのだ。
そして、私としては、彼女は歴代最高の帰蝶となりうる実力があったと思っている。
その気位の高さ、気性の激しさ、可憐にもエロくもなれる振れ幅、演技力を生かし、
若い頃から熟年期まで上手に年を重ねながら、新しい帰蝶像を見せてくれるはずと、心躍らせていた。
大河ドラマファン、信長好きとして、本当に残念だ。
★★★
来年の大河ドラマ「麒麟がくる」。
脚本はあの池端俊策。大河ファンの間では”隠れ名作”と呼び名の高い「太平記」(1990年、真田広之主演)を書いた人である。
彼の脚本は人間を真正面から捉え、歴史と登場人物に深々と切り込む。
作品数自体は少ないが、ひとつひとつが珠玉の名作となって、心に残る。
鋼の構築力、キャラクター同士の絶妙な絡み合い。
男同士の権力争い、嫉妬、親兄弟の因縁、女性のなまめかしさと艶やかさ。
この人が書いたら、はっきり言って外さない。生半可ではないクオリティーに仕上がる。
そんな池端氏がオリジナルで戦国時代を書くという。
氏の年齢的には、最後の大河となるかもしれない。
しかも、満を持して、最近の大河では取り上げられなかった、光秀と信長の話。
この2人にがっつりスポットがあたるのは、「国盗り物語」以来。
「国盗り物語」では、聡明で繊細な光秀を演じた近藤正臣と、カリスマ性あふれるエネルギッシュな信長を演じた高橋英樹のぶつかり合いが素晴らしかった。
昭和の二大名優と否が応にも比較してしまうが、
令和の光秀と信長はどんなドラマを紡ぎ出すのか。
私の来年の最大の楽しみは、日曜午後8時のNHKにある。(BSだと午後6時である)
毎年初回には、正座して茶の間で大河ドラマの第1回を見守ることにしている。
そんな来年の大河の、最大の見どころは、個人的には沢尻エリカの帰蝶にあると思っていた。
帰蝶(濃姫)は、光秀と信長、2人の男心を揺り動かす、キーマンともいえる存在だ。
彼女がどんなに美しく、華やかに、気位高く、戦国の男たちを揺さぶる帰蝶を演じるか、楽しみだった。
沢尻は池端氏の脚本作品に何作か出演していたと記憶している。池端氏も彼女の実力を買っていたのだろう。
★★★
その機会が奪われてしまった。
容疑者ということで、罪は確定していない。
ただ、逮捕容疑が本当だとすれば、これは推定の粋を出ないが、
もちろん彼女の失態、彼女の責任である。
いや、破滅するべくして、破滅したというか……。
おそらく、彼女自身もこんな日が来ることは分かっていたのではないかとも思う。
絶頂期を自らぶち壊した。
自業自得といえばそれまでだが、最近の目覚ましい活躍が危ういバランスの上に成り立っていたとすれば、闇の深さが何とも、もの悲しい。
大河ドラマというのは、役と共に成長する役者を見守るのが、鑑賞の醍醐味である。
ファンから言わせれば、途中から役者が変わるのはありえない。
(かつて「勝海舟」で主演・渡哲也の病気降板という例外はあったが…)
代役が決まり次第、初回から撮り直しとなるのでないか。
少なくとも、私は帰蝶が途中から変わったら、興ざめしてしまう。
ただ、膨大な撮り直しの予算などを考えると、公共放送だし、そう簡単にもいかないのだろう。
とにかく、ニュースに触れる度に悲しくなるが、代役が決まるのを見守りたい。