拙者には師匠がいる。強い侍になるための、侍の師匠である。
強い侍になるには、どうすればいいか、侍の魂を表現する作り手となるには、どう生きるべきか。自身も使い手であり、侍の心を持っている師匠は、私をいつも導いてくれるのである。
※ちなみにコーチング中はお互い正座して、禅問答のように向かい合うのである。
師匠:なぜ一人だけ残されたのか?その意味とは?
鐵子:家族と絶縁する機会なのかもしれない。
師匠:その選択しはありうるのか?
鐵子:否。私は人を切れない。
師匠:君はなぜ生きているのか?
鐵子:剣の使い手となり、それを表現するため。人の痛みに寄り添うため。
師匠:では今回のことは、どんな意味があるのか?
鐵子:差別された者の痛みを知る。疎外された者の悲しみを知るため。
師匠:そういう苦しみを知らなければ表現者となりえないだろう。むしろ忘れようとせず、この感覚を徹底的に味わい尽くしては?お主の場合、全てが芸の肥しとなるではないか。まして時代物は階級社会。差別を知らない人間が書けるものではない。
鐵子:おおっ!私の心は荒れ狂っております。これを鎮める必要はないのでしょうか?
師匠:そのままにしておくがよい。むしろ、強く深く味わうべし。
鐵子:剣豪たちにもそんな時代があったのでしょうか?
師匠:うむ。若いころこそ、もっと激しく、荒れ狂い悩んだ者のほうが多いはずじゃ。若いうちから落ち着いていたら、つまらぬ人物になってしまうぞ。儂も血気盛んな時代があったわ。はっはっはー!
鐵子:吉川英治の宮本武蔵しかり……
師匠:悲しみも苦しみも体の感覚まで全て覚えておくのじゃ。
鐵子:今、書きたい作品が思い浮かびました。
師匠:ほほう!どんな?
鐵子:「渡る世間は鬼ばかり」!
~ちゃらららららら、ちゃららららららーたたたたたーん♪~
終